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2006年11月 2日 (木曜日)

教育基本法改正問題についての小考

 当ブログの10月27日付けの記事に対するRig様の久々のコメントに対して、返答のコメントを書いたところ、かなり長いものになってしまいましたので、ここで独立した記事として掲載します。

 Rig様の仰るとおり、なぜこの時期に未履修問題が発覚したのかは考えてみる必要があるかもしれません。安部政権をアシストするという意図も感じられないわけではありません。しかし、今の段階では何とも言いようがありません。そのため、報道するマスコミに問うてみるしかないとコメントしたわけです。
 
 憲法とは、国を縛る約束です。国家権力の暴走を食い止めるためのものですね。教育基本法も、公的教育の原則を定めるものですから、あなたの仰るように憲法に近い性質を持つともいえるでしょう。

 あなたは今これが愛国心を重視した物に改正される動きがあることに関して、軍国主義の再来の予兆だと思われているようですが、それは少しオーバーなのではないでしょうか。仮に再来したとしても、かつてのようにひどくはないと思いますが。 

 なぜかというと、現在日本という国は「軍」を持っていませんし、自衛隊は文民統制の制度が確立しています。それに第2次世界大戦後、国民は戦争アレルギーを抱えています。教育基本法が改正されたからといって、軍国主義に傾いていくというのは少し論理の飛躍があるような気がします。僕としては、教育基本法よりも、日本の脆弱なマスコミの方が心配です。今の日本のジャーナリズムは非常にまずいと思いませんか。

 さらにいえば、今の日本人にはどこか「個人主義」がはびこっていて、全体への奉仕の心が薄れつつような気がします。もっとも、この「個人主義」とは、欧米の個人主義とは違うものであると思いますが。欧米の個人主義はその根底に相手へのリスペクトがあり、その上に個人の自由が成立しています。日本の「個人主義」は、「自分さえよければあとはどうでもいい」主義。こんな状況下にいることを感じているのは僕だけでしょうか。これを変えていくため、過激にならない範囲で国や地域への愛を持たせるのはそんなに悪いことではないと思えます。まあ、愛というのは押し付けられるものではありませんから、「日本人の一員として、自分が愛せる国や郷土を自らの手でつくり、育んでいく責任と気概を持て」ぐらいの意味合いであればいいのではないでしょうか。

 そもそも、公的教育とは「国民」をつくるためにもあるのです。同じ言葉や価値観や考え方、日本人とは何かを学ぶことで、国民全体に一体感を持たせる役割があります。たとえ、顔かたちがほとんど同じ2人の人間がいたとしても、前述の要素が全く違えば、お互いを分かり合うことは難しく、お互いを「同じ範疇の人間だ」とは思えないでしょう。このような性質を持つ教育だからこそ、国民性を変える力も持っているといえます。この力を正しく活用することで、日本がもっとよい国になれるでしょう。
 
 こうした意味で、教育基本法は非常にデリケートな法律です。僕は今の改正の方向性は間違ってはいないと思いますが、現行の基本法には道徳に関する記述がないため、今回の改正で新たに「愛国心」の記述をすることに強い反発の声もあります。法律の性質自体が変わってしまうのは、僕も少しそれでいいのかなと思いはしますが、慎重に議論を重ねた上で力を正しく使えるような形で決着できれば、それでいいと考えます。

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コメント

はじめまして。トラックバックを張るのなら、一言、コメントで断っていただけると、ありがたいです。

投稿: kuriyanonushi | 2006年11月 2日 (木曜日) 21時46分

 教育基本法への愛国心追加が即、軍国主義の再来に繋がるという考えに論理の飛躍であることはよくわかります。むしろ、悪化ばかりに怯えて改めるべきことを改めない姿勢の方が問題が多いでしょう。その点において、教育基本法の改正に恐れを覚えるのは過剰反応であり、教育基本法に愛国心が追加されたからといって即座に軍国主義を思い浮かべるのはやはり偏見なのでしょう。
 しかし、教育というのは一個人の人格を形成する要素であり、その微細な変化によって国の多数派の思想が大きく変わってしまうような性質を持つものですから、教育基本法の改正については慎重にならざるを得ません。今期の改正を目標とせず、真実「改正」と呼べる改正を行って欲しいと思っています。
 
 SIR-5氏がおっしゃった「日本のジャーナリズムはまずい」という意見には僕も同感です。僕自身、良いジャーナリズムが何なのかについて明確な意見を持ってはいませんが、私たちが”簡単に触れられる”ジャーナリズムにはまずいものが多いように思われます。極端に商業主義に傾いたジャーナリズムが利益の獲得・保全に走りがちになってしまい、本当に伝えるべきことよりも儲かることを伝えることに力を入れてしまうのは当然の流れです。しかし、ジャーナリズムの発展にはジャーナリズムの受け入れ側、つまり読者・視聴者の選択が不可欠ですから、まず発展させるべきは私たち読者・視聴者の「知る意欲」でしょう。

 個人主義については、日本人の個人主義が欧米に比べて発展途上であることは当然のように思われます。全体主義色の強い環境に暮らしていた日本人が欧米から伝わってきた個人主義を受け入れてそれに移行し始めたのはこの半世紀のことですから、個人主義によって発展してきた国の個人主義と比べて幼稚なのは致し方ないことでしょう。しかし、個人主義の発展・改良のために法の枠組みを変化させるのは本末転倒なのではないでしょうか。民主主義・個人尊重主義のもと、国家権力の暴走を抑制し、主義を保護するために作られた現在の憲法及び法律をその主義を変化させるために作り変えるのはやはり矛盾を感じます。
 しかし、私も日本の個人主義が「利己主義」とほぼ同一のものになりつつあることには疑問を覚えます。この個人主義の発展にこそジャーナリズムの活躍の場があるのかもしれません。

 詳細に渡って返信ありがとうございました。とても良い刺激を受けることができました。これからも頑張ってください。

投稿: Rig | 2006年11月 3日 (金曜日) 17時32分

 コメントありがとうございます。アップが遅れてすみません。
 
 kuriyanonushi様、失礼いたしました。

 Rig様、長文のコメントありがとうございます。
 残念ながら僕は最近、日本では本当の意味での個人主義は生まれにくいのではないかと思っています。このブログで以前紹介した、「喋るアメリカ人 聴く日本人」を読んだ後からそう感じているのです。日本は全体主義の国のようで、本当に個人が尊重されているのかは疑問です。日本は幼児期から、全体の中に溶け込むよう親などから教育を受けます。例えば、何か悪さをすれば、「そんなことしたら、お母さん悲しいな」とか、買って買ってと駄々をこねる子供には「もうあなたなんか知らない。置いていくからね」など、集団の中にあって、その和を乱した場合、大変なことになるということを叩き込まれます。
 その結果、ちょっと人とは違ったことをした場合、叩かれてしまう社会になっている気がしてなりません。そんな国に個人を尊重する個人主義が根付くのでしょうか。
 
 僕がこの記事の愛国心に関する記述で言いたかったことを改めてここで整理します。まず僕の考えは、国を愛する心というのは国を誇る気持ちであろうというところからスタートしています。では、どうしたら国を愛せる(誇れる)ようになるのか。それは国民自らが積極的に国づくりに関与して、自分の理想とする国に変えていってこそ生まれてくるのではないだろうか。ならば今の日本ではこういうことができるだろうか。答えは否。なぜなら、日本を今覆っている空気というのは、自分さえ好ければいいというものであるようだから。そうすると、この国が理想的国家になるために教育はどうあるべきか・・・。
 こうして僕が行き着いたのは、「日本人の一員として、自分が愛せる国や郷土を自らの手でつくり、育んでいく責任と気概を持て」というという文でした。こういくことであれば、教育基本法に書き込まれても差し支えがないのではないでしょうか。立法の専門家ではないのでどうだかわかりませんが。
 僕の論理は民主主義・個人尊重主義とは何ら矛盾していないと思います。

 追伸:履修不足問題が発覚したのは、地方の新聞社に保護者から情報が寄せられたかららしいですよ。週刊文春によるとですけど。

 

投稿: SIR-5 | 2006年11月 4日 (土曜日) 16時20分

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