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2006年11月 8日 (水曜日)

核保有論議が封殺されてしまうのはいかがなものか

 自民党の中川政調会長や麻生外務大臣が核保有議論の必要性を主張したにもかかわらず、この議論はなされることなく封殺されてしまう模様だ。本当にそれでよいのだろうか。

 僕は必要に応じて核を持ってもかまわないと思っている。それは日本にとって技術的に難しいことではないし、中古品を手に入れる事だって可能だ。しかし、現在の情勢や、日本人のその場の空気に流されてしまう気質を考え合わせれば、核を持つということは、外交上マイナスにもなりかねず、核兵器の実際上の使用の危険性もあるため、今はその時期ではないだろう。それに加えて核兵器は実際には使用できない代物である事も考慮する必要があるだろう。

 さりながら、議論まで封殺されてしまうのは大変な問題である。

 現下の状況では、北朝鮮の核という新たな脅威が現れている。この暴挙は国家の存亡にとって一大事でなければ何なのだろう。例えるなら、町内の暴力団がマシンガンを手に入れた上、保有宣言までしてしまったようなものだ。この機に臨んでなお論議すら許さぬという風潮なり政治家の発言なりは、一体何を考えているのやら理解に苦しむ。我が国の安全保障を今一度早急に考え直す必要性を感じていないのだろうか。

 論議というのは、別に核を持つということを決めるためものではない。論議の結果、非核三原則の遵守という結論に辿り着くならそれでいい。今求められているのは新たなるコンセンサスだ。持つのか、このまま持たないのか。アメリカの核の傘に入ったままでいいのか、そうでないのか。核はこの国にとってプラスか、マイナスか。このような事を、国民的議論の俎上にあげる時期が来たのだと思う。

 思えば、我々はこのようなことを1度も国民的レベルで議論したことがないのではなかろうか。こんな風にして安全保障政策が勝手に決められていたのではたまったものではない。今現在、核保有論者が日本国内に増えている気がする。このような時に、いつまでも非核三原則を国是といって聖域扱いするような国は、先行きが思いやられる。マスコミの取り上げ方も中途半端でうんざりしてくる。こんなときに頼りないから信頼できない。

 個人的には、議論をするだけでも、相手国に対する牽制になるので日本の安全保障上はプラスに働くだろうと思う。心の中では持つ気が全くなくても、その用意があって、やる気になれば持てるということを見せるだけでもだいぶ違うと思うのだが。

 ただし実際の議論の上では、広島・長崎の惨劇を認識し核兵器が如何に非人道的であるかという一応の理解も不可欠であって、それがなくてただ闇雲に主張しあうのは愚かなことだとも思う。

 読者の皆さんはいかがお考えだろうか。多角的な議論を望んでいるので、コメント等は大歓迎です。

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コメント

トラックバック有難うございました。なるほど仰られていることはよく分かりました。私は現実的にはENJOY AMBITION!!さんのお考えは正しいように思います。しかし最後の行にあるように、被爆国としての理解が飛ばされている意見が多いのも事実です。そして反対意見に対する礼を欠いた激しい批判…もよく見受けられます。そんな意見と、そこをしっかりと考えられている方と混同され易い状況で、このまま突っ走っていいのかなぁという思いから書いたことなんです。私はそんなはっきりした思想はないですから、何か違和感を覚えます。ブログでも何でも良い意見交換の議論を期待していますから。悠長ですかね?長々と失礼しました。

投稿: oimosefe212 | 2006年11月 8日 (水曜日) 17時04分

ぼくも議論をすることは大切だと思います。
ただ、「国民的な議論」が必要かどうかは少し疑問です。
一般大衆が核の問題について議論をしてもおそらく、建設的なものにはならないと思います。
ただ、政治家の間では、よく話し合って欲しいと思います。

投稿: サイン(koichi1983) | 2006年11月 8日 (水曜日) 19時06分

核兵器を日本が持つという選択肢はあらゆる側面から考えてありえないと思いますが、持たない理由というものを明確にしておく必要があります。そのために核兵器についての議論は必要だと考えます。
 日本は、核不拡散体制の下で非核兵器国という立場を堅持しながら、米国の核の傘の提供を受けているのが安全保障上最も経済的で効果的な方法だと思います。

投稿: ei | 2006年11月 9日 (木曜日) 03時25分

oimosefe212様、 サイン(koichi1983)様、ei様、コメントありがとうございます。

 oimosefe212様。核兵器が如何に恐るべき兵器であるかという認識が欠如したまま保有論が突っ走ってしまうのは恐ろしいことです。核兵器はその無差別な残忍性から、一般的な国であれば、その実戦での使用の可能性はほとんどないといえると思うのですが、北朝鮮等は果たして一般的な国といえるのかは甚だ疑問であり、加えて、テロリストの手に渡ってしまえば取り返しのつかない事態を招くでしょう。
 さらに目下アメリカでは実戦での使用を念頭に小型核(「使える核」)の研究がかなり進んでいる模様ですし。心配要因は多いです。 

 サイン(koichi1983)様。一般大衆が日本の安全保障に関して議論するときには感情的になってしまうことがあって、建設的なものにするのは難しいだろうというのはわかります。しかし、国民が国家の重大な決断をを政治家に丸投げしてしまうのはどうかと思います。

 ei様。全く同感です。しかしこれには1つ苦しいところがあります。日本はアメリカの核の傘に覆われているにもかかわらず、唯一の被爆国として核廃絶を訴えていく姿勢をとっているという矛盾を生んでいることです。僕自身は、核兵器が世界からなくなることはほとんど望めないと思っていますが、我が国には被爆国としての役割があることも確かです。このあたりをどう処理していくかが難しいところになるでしょうね。皆目見当もつきません。

投稿: SIR-5 | 2006年11月10日 (金曜日) 12時50分

 確かに、日本が日米同盟によって、核兵器による積極的な安全保障を受けながら、一方で核廃絶を主張することは矛盾していると見ることができます。黒沢満が積極的安全保障と消極的安全保障に関しての論文の中で積極的安全保障の核軍縮との論理的矛盾について指摘しています。しかし、一方で、核廃絶には核軍縮というプロセスがあり、積極的安全保障(核の傘)は必ずしも核軍縮というプロセスには矛盾しないということが言われています(浅田)。東西冷戦下で米ソがSTARTによって核軍縮を進展させることができたということでもそれは明らかであると思います。
 また、そもそも、核廃絶というのが平和にとって本当に良いことなのかどうかということも議論しておかなければなりません。第二次大戦後は大国間平和の時代であったといわれます。歴史上大国間の平和がこれほど長く続いた時代はなかったのです。では、なぜこのような長期の平和が実現できたのか?それは核兵器をもつ強大な覇権国の登場と関係があります。皮肉なことに人類は、人類を何度も絶滅させることができるほどの兵器と引き換えに平和を手に入れたのです。
 私は、核の廃絶ではなく、核兵器の拡散を防ぎ、将来的には国際社会での管理(現在では核兵器国による)のもとに置くことが、かろうじて実現可能な理想ではないかと考えている。
 国際社会はアナーキーであり、秩序維持のためにはホッブスのいうリヴァイアサンは必要であると思う。
 

投稿: ei | 2006年11月10日 (金曜日) 20時56分

 ei様、コメントをお寄せいただきありがとうございます。アップが遅れ、申し訳ありません。

 あなたのお考えと僕の考えはかなり近く、共感できる部分も多くありました。

 僕も核軍縮はすべきであるし、また実現可能だと思います。
 バランス・オブ・パワー(力の均衡)論に関してもあなたの仰るとおりだと思います。ただし僕はあなたの仰る大陸間の平和(ここでは主に米ソの直接対決がなかったということですよね?)に限ってのことでしょう。確かにここでは恐怖によって安定が保たれたと見るのは間違っていないと思います。核を持つ国に喧嘩をふっかける国はほぼいないでしょうから。この辺を考慮に入れていない核廃絶論者がいることはとても悲しむべきことです。これに関して何らかの見識を彼らは持つべきで、何も考えていないのはむしろ愚かな事です。
 また、技術を持ってしまった以上、人類がこれを忘れ去ってしまうのは不可能なことで、核の廃絶はできないと僕は考えています。問題は、あなたと同じく、核とどう上手く共存するかということですよね。核の力の暴走を許せば、おぞましい事態が待ち受けているというのは分かりきった事です。広島・長崎の惨状を繰り返してほしくはありません。もしかしたら人類の滅亡までもが現実になるかもしれません。
 核による安定とは諸刃の剣であるわけです。

 しかし、現在ではテロリストの手に核が渡る可能性も浮上していますし、北朝鮮のような国家でも核を保有するようになりました。これから核の扱いをどうしていくかというのは大変大きな問題です。

 ここで、あなたは国際社会の管理下に世界の核兵器を置こうと仰っていますが、果たして実現できるか僕は疑問です(あなたもあまり可能性は大きくないとお思いのようですが)。どこの国も<国際社会の利益=自国の利益>とならないことも少なからずありますから、核は自国で保有することこそが重要だと考えるのではないでしょうか。今の、全国家の横並びである国連体制で果たしてできるでしょうか。世界政府などができない限りちょっと無理かと思われます。そうした意味で、EUならまだ可能性はあるような気もしますが・・・。

 僕は核の不拡散は今後どんどん難しくなると思います。今後重要なのは対核防衛策で、そのための軍事兵器研究が進むといいのですが。

 これまで核は使えない兵器として専ら抑止力としての保有でしたが、アメリカは「使える」核兵器の開発に力を注いでいるという話もありますから、実戦使用の日も遠くはないでしょう。一国で使用を始めれば、他の国も使うことでしょう。

 やはり、軍縮と同時進行でそういった防御の研究も積極的に進めるべきです。


 まとまりのない文となってしまい申し訳ありません。

投稿: SIR-5 | 2006年11月13日 (月曜日) 13時27分

weです!

投稿: we | 2006年11月17日 (金曜日) 23時19分

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